5月から10月までの間は熱中症以外に、ノミやダニなどの外部寄生虫が関与しない急性皮膚病などの思いがけない病気が発症する機会が多くなります。
太陽光に含まれる紫外線は5月から10月まで日本の地上に最も強く到達しますが、この紫外線はヒトばかりでなく動物、特にワンちゃんの眼の水晶体も傷つけます。紫外線を繰り返し眼に浴びることにより、眼の水晶体が傷つき、この傷を修復させるための生体反応が繰り返されることにより白内障が発症します。白内障を予防するためには、この時期日射しの強い日中の散歩は避けましょう。
また、紫外線による光過敏症はワンちゃんにも認められますが、特にネコちゃんの頭部を中心に皮膚炎として発症します。冬にはなかった赤い発疹などが、夏に急に頭部に出現する場合は光過敏症の可能性があります。関連して、紫外線によるヒトの皮膚炎は20~30年以上を経過すると皮膚癌に移行することが知られていますが、ワンちゃん・ネコちゃんの光過敏症の皮膚炎も老齢になると皮膚癌に移行することがあります。
5月から10月までの間は、直射日光の当たる屋外のアスファルト付近は50℃前後になります。日射しの強い日中にワンちゃんを散歩させることや、締め切った車内にワンちゃん・ネコちゃんを放置することは、白内障や熱中症を予防するためにも避けましょう。ワンちゃん・ネコちゃんの皮膚は毛皮である上に発汗しません。さらに、ワンちゃんは寒帯由来オオカミの子孫であることから熱帯乾燥地帯由来のネコちゃんより放熱能力が劣るため、容易に熱中症を発症します。散歩から戻ってから3時間以上経過しても呼吸が荒く、元気・食欲が戻らない時は、治療が必要でしょう。
一方真夏日などが続くと、室内飼育のワンちゃんでも湿疹が発症しやすくなります。前夜は異常が全く認められなかったにもかかわらず、怪我をしたのではないかと思われるような大量の出血が皮膚から突然認められます。ワンちゃん・ネコちゃんは彼らにとって異種動物であるヒトに囲まれて生活しているので、飼い主さんが考えている以上に強いストレスを常に受けています。この状態の時に高気温などのストレスが新たに加わって、ストレスの合計が一定の限界を超えてしまうと、免疫機能が急激に障害を受けます。つまり、本来病原体から自分の体を守るための免疫が、強いストレスによる機能不全に陥り自分自身の皮膚を攻撃した結果、皮膚からの出血となります。夏季急性湿疹の発症です。さらに、出血部位が皮下組織の場合、急激に腫大する血腫(血液の塊)が皮下に認められます。放置しておくと慢性皮膚炎、慢性皮下織炎や重症例では急激な出血のため心不全を招く場合がありますので、早期に治療する必要があります。ネコちゃんは丘疹(赤いボツボツ)、発赤、大量のフケなどの異常を示すことが多くなります。