ワンちゃんが急に全力疾走した後や椅子・ベッド・階段など高所を昇降した後に、後肢が交叉してきちんと歩けない、後肢が麻痺して動けないことがあります。このような症状が現れたら、椎間板ヘルニアを発症している可能性がほぼ100%です。できるだけ早く獣医師の診療を受けましょう。
肥満のワンちゃんでは過剰の体重が不均一に腰椎に加わるため、椎間板が腰椎骨間を一層容易に滑って脊髄神経を傷つけます。脊椎神経の受傷に伴う強烈な痛みは患部の神経組織内に結合組織を形成させます。治療が遅れた場合、脊椎神経組織内に形成された結合組織が神経組織回復の障害となります。受傷後長期間放置されたワンちゃんでは後肢が完全に麻痺してしまうばかりでなく最悪の場合は、自力で排便・排尿することが困難になります。
後肢の麻痺・運動失調の症状を呈した5頭の肥満のワンちゃんが11月に相次いで当院に来院されました。なかには発症後2カ月経過したため後肢がほとんど完全麻痺に近い状態のワンちゃんもいましたが、注射と飲み薬により全員順調に回復しています。外科手術は治療費が高額になりがちにもかかわらず治癒効果はあまり高くないので、お勧めできません。椎間板ヘルニアの発症率が秋冬に高まるかどうかについては、まだよく判かりませんが、激しい運動をしやすい気候であることが発症要因の一つとして考えられます。